中間管理職の仕事は「立場を切り替える仕事」でもある
組織のなかでリーダー、特に中間管理職が直面する難しさの一つに、「立場が一つではない」という問題がある。
管理職は同時に、
- 組織の方針を現場に伝える“伝達者”
- 現場の不満や課題を上層部に届ける“代弁者”
- そして、いち個人としての価値観や感情を抱えた“生活者”
という、三つの顔を持っている。
この三つの役割は、いつも同じ方向に向いてくれるとは限らない。
むしろ、日常業務の中でしばしば“せめぎ合う”。
中間管理職が判断に迷うのは、能力不足ではなく、
担っている立場が多層的だから である。
役割葛藤をどう扱うか
現場の不満を誰より理解しているのに、
組織方針の立場で説明しなければならないときがある。
逆に、組織方針を正しいと思っていても、
現場の温度を考えれば “そのまま伝えるのは違う” と感じることもある。
この“ズレ”は、中間管理職であれば誰でも経験する。
心理学では 「役割葛藤」 と呼ばれる現象だが、実務では、毎日のように現れる。
ポイントは、葛藤をゼロにする必要はないということだ。
むしろ、葛藤があること自体が、“組織と現場をつなぐ仕事” をしている証でもある。
大事なのは、その葛藤をどう扱うかである。
部下への共感と、組織への忠誠。その間にある「調整」が仕事になる
中間管理職は、部下に寄り添わなければ信頼は得られない。
一方で、組織の決めた方針を伝えなければ業務は動かない。
この二つは、しばしば矛盾する。
だからこそ、
誰の立場で話しているのかを明確にする技術が重要になる。
- 「ここまでは私の意見」
- 「ここから先は組織の方針」
この切り替えができると、部下は混乱せず、
組織にも不必要な誤解を生まない。
中間管理職とは、
意見の中身そのものより、“立場の扱い方” で成果が決まる職務
なのだと思う。
副リーダー・リーダー間で役割が異なることもある
同じチームにいても、
“どの立場がより強く求められるか” は職階で変わる。
- 副リーダーは、チームの温度や空気をつかむ「現場寄りの役割」が強い
- リーダーは、組織方針との整合をとる「組織寄りの役割」が強い
こうした違いがあるため、
同じ出来事でも受け止め方や表現の仕方が変わることがある。
これは優劣ではなく、
求められている役割の違いに過ぎない。
しかし、当事者としては割り切れず、ときに悔しさや不遇感として残ることもある。
その感情まで含めて、中間管理職という仕事のリアルなのだ。
理想を言えば――葛藤そのものを理解する管理職でありたい
役割は違っても、現場の温度を汲み取った副リーダーの行動には価値がある。
一方で、組織を代表し、その立場を守るリーダーの判断にも正しさがある。
リーダーが目指すべきは、どちらかを切り捨てることではなく、双方の意味を理解したうえで調整することだ。
「ガス抜きだって必要なプロセスだ(そこは十分理解しているよ)。ただ、組織としての立場はこうだ。それは揺るがせない。」
「社長(経営層)の方針は無茶な面もあるけど、方向性としては正しい。」
そんなふうに、
“現場”と“組織”の両方に敬意を払いながら、落としどころを作れるリーダーでありたい。と今の私は思っている。
それが、リーダー・管理職という仕事の成熟だと感じている。
読者への問い
- 最近の判断や発言で、自分が「どの立場」で話しているのかを、意識的に切り替えられていただろうか。
- 現場への共感と、組織方針への説明責任の間に生じる葛藤を、「避けるもの」ではなく「扱うもの」として受け止められているだろうか。
- 部下に対して、「ここからは組織の立場」「ここまでは私の考え」といった“立場の線引き”を、言葉として示せているだろうか。
- 副リーダー/リーダーなど、職階による役割の違いを理解し、他者の判断や表現を“優劣”ではなく“役割の違い”として受け止められているだろうか。
- 現場と組織の双方に敬意を払いながら、自分なりの「落としどころ」をつくろうとする姿勢を、日々の行動で示せているだろうか。
次章予告
次章では、情報がない中での判断をどう行うか、その作法を整理します。

