第六部 疑問に答える 社長はなぜ「優しく」導いてくれなかったのか? ――経営層が管理職に求める“プロの条件”

チームの代表

ブログへの質問

読者の方から、以前書いた「社長に『難しい』と答えて叱られたエピソード」(コラム「社長の提案に部下ができること、それは”賛同すること”」)について、次のようなご質問をいただきました。

「社長の『他の奴にやらせる』という言葉は冷たすぎる気がします。社長の側も、いきなり切り捨てるのではなく『では現場の状況を聞こう』『何があればできるのかな?』と、部下を導くべきだったのではないでしょうか?」

正直に告白すれば、当時の私も内心では「なんでいきなりそんな冷たいことを言うんだ。少しは現場の状況を聞いてくれてもいいじゃないか。そんな無茶な提案できる奴なんているのかよ。」と恨めしく思ったものです。

しかし、今ならはっきりとわかります。 「社長がもっと優しく導いてくれればよかったのに」というその考え自体が、中間管理職としての甘えであり、自分の役割を理解していなかったということだと。

① 「部下を教育する」する役割は部長で終わっている

 現場の最前線にいる一般社員や新任の係長に対してなら、リーダーが「どうした? 何がネックになっている?」と丁寧に話を聴き、できるまで支えることが絶対に必要です。それはこのブログでも繰り返し書いてきた通りです。

しかし、会社のトップである経営層と、現場の実務責任者である課長クラスとの関係は違います。もはや「手取り足取り教育して導く」というフェーズではなく、経営方針と現場の実行力をどうすり合わせるかという、実務責任者としての役割が求められる場なのです。

経営層が社内で相手にしているのは、「教えなければ動けない部下」ではありません。言われなくても「ぜひやらせていただきます」と即答し、どうすればできるかの算段(条件)を自律的に整えてくる人間です。社長が優しく助け舟を出してくれるのを待っているうちは、まだ「導かれる側の人間(プレイヤー)」にすぎません。

② 「難しいことをやる」のが管理職の存在意義

 以前のコラムで書いた通り、経営層の判断は会社全体の運命を左右する文字通りの「経営判断」です。その重い決断に対し、実現のための条件を整理して上に提示するという自分の役割を放棄し、ただ「難しいです」と打ち返せば、社長からすれば「実務の調整(難しいこと)を丸投げしてくるなら、君がそこに座っている意味はない」となるのは当然です。

社長からみれば「課長=オレがやりたいこと、やろうと決断したことを現場で実行する実行部隊の隊長」なんです。「実行部隊の隊長なんだからなんとかして実行しろよ。そのためにお前をそこに据えたんだ。」ということです。社長の「ほかのやつにやらせるから」という言葉は、不機嫌な八つ当たりなどではなく、「君は管理職として期待外れだ」という経営トップからの極めてまっとうな評価だったのです。

③ 失敗を「他責」にしないメタ認知

 あの時の失敗を「社長の言い方が悪かった」「もっと導いてほしかった」と他人のせいにする(他責にする)のは簡単です。しかしそれでは、一生プレイヤーの視点から抜け出せません。

「社長が導いてくれなかったから」ではなく、「『ぜひやらせていただきます』と言い切り、条件を提示できなかったのは、私がまだ管理職として自覚が足りなかった(社長から見れば期待外れだった)からだ」。 そう自分の未熟さとして腹落ちさせ、ひどく落ち込んで悩んだ結果、私は「失敗を自分の行動の結果であると認める」ことができ、それぞれの役割と見ている地平の違いという一段上の視点に気づくことができました。

相手(経営層)が理不尽だろうが、言葉足らずだろうが、優しく導いてくれなかろうが、「そんな環境の中で自分がどう動くか」を考える。先回りして条件を整えることで、相手を現実的な着地点へと導くのです。

この処方箋から導き出すおすすめの思考法

ただ、こう言うと、「中間管理職の覚悟というのはなんて厳しいものだ」と感じるかもしれません。しかし、こうした組織の構造や役割の違いを理解してさえいれば、そもそもこんな話になっていなかったはずです。 だからこそ、ここで改めて言いたいのです。「そういうものだ」としっかり認識して、自分の役目を果たせばいいのです。 それが課長の役割なのだから、理不尽に見えるトップダウンも過度に恐れる必要はなく、ただ課長の役割に徹すればいい。

実は、知ってるだけで誰にでもできる、マインドセット(視点の切り替え)の問題なのです。

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