難しいは、やらない理由になっていない
「難しいは、やらない理由になっていないじゃないか。」
これは、私が管理職になったばかりの頃、社長に面と向かって叱られた言葉だ。
ある日、私は社長へのブリーフィングを任された。同席予定の役員にも事前説明していたので、自信をもって臨んだ。ところが実際に始まってみると、社長は想定と全く違う方向から話を切り出してきた。従来の方針と明らかに食い違う提案だった。
咄嗟に私は口にしてしまった。
「それはさすがに難しいと思いますが……」
その瞬間、空気がピリッと変わった。
「難しいって何だ? 難しいことをやるのが仕事だろう。いいよ、ほかのやつにやらせるから。」
場の空気ごと叱られた感覚だった。もちろん、私には悪気も反発もなかった。ただ“今の自分にはできない””そんな想定外の話はチームに持ち帰れない”と反射的に反応しただけだった。
「まず受け止める」が管理職の基本
だが、社長の言葉は正しかった。確かに易しいことばかりしていては仕事にならない。
仮に実現が難しくとも、その場で「できません」と言うのではなく、たとえばこう言えたはずだ。
「わかりました。ぜひチャレンジしてみたいと思います。ただ、実現にはいくつか前提条件があると思いますので、そのあたりを整理した上で、あらためてご説明に伺ってもよろしいでしょうか。」
つまり「難しい」と感じても、それをそのまま口にするのではなく、まず前向きに受け止める。その上で、実現に必要な条件や制約を冷静に伝える。これが社会人、特に管理職としての基本的なコミュニケーションなのだ。
「賛同すること」が出発点
この経験を経て、私の中にひとつの“格言”が生まれた。
「社長(経営層)の提案に部下ができること、それは“賛同すること”。」
まずはいったん受け止める。そして、冷静に前提や課題を共有し、対話で方向を整えていく。
これこそが、組織の中で生きる者の知恵であり、私がこのブログで中間管理職の実践知として繰り返し語ってきた『会話における横綱相撲』の原点だった。
