「全体最適が大事だ」と言われても、実現は簡単ではない。組織の作りこそ、その壁だ。
多くの組織は機能ごとに分かれており、営業、開発、管理……それぞれが異なるKPIと責任を負う。各部門が自分の成果に集中すること自体は正しい。しかし、その構造のままでは「自部門の最適」と「組織全体の最適」が一致しない局面が必ず出る。調整を後回しにしたり、他部署の都合を無視したほうが短期の自部門KPIは伸びる——そんな誘因が、構造的に内蔵されているからだ。
ここで肝心なのは、誰かが怠けているからでも、わざと間違っているからでもないという点だ。むしろ、まじめに自部門の責任を果たそうとするほど、部分最適に傾きやすい。構造がそう促すからだ。
スローガンだけでは動かない
だから「もっと全体を見よう」というスローガンだけでは動かない。まずは、自部門の行動が他部署にどう効いているかを把握するところから始める。課長としてできる現実的な一歩は小さくていい。
私の職場では、各課のKPI等の事業目標は、課長であれば見ることができる。私は部内各課のKPI一覧を眺めながら、自分の判断が相手のKPI等に影響するものがないかチェックしていた。そのうえで、意思決定の直前に「この判断はどの部署に影響する? どの順に声をかける?」と自問する。
声をかける順序は、事案のレベルによって変わる。想像だけで終わらせず、まずは自分のチームの担当者に確かめ、必要に応じて他課や他部の関係者とすり合わせるようにしてきた。
悪気があるわけではない
全体最適は、事情の異なる部門間の合意で成り立つ。組織が縦に割れている以上、調整は簡単ではないが、現場に最も近い課長だからこそ見える摩擦点がある。
「部署間での連携」というスローガンが難しいのは、相手に悪気があるからではなく組織構造の問題だ。だからこそ、そこに小さく手を打っていくことが大きな成果への第一歩だ。
次章予告
私には部長が社長ばかり見ているように感じたことがあった。だが、これも全体最適を考えると合点がいったのだ。次章ではその話をしたい。
読者への問い
あなたの最近の意思決定で、他部署への影響をあらかじめ確認・共有していただろうか。
