私も管理職になりたての頃、評価者向け研修で「部下の日々の行動をしっかり記録して、評価につなげましょう」と教わり、気がついたことはメモを取るよう心掛けている話を前章(第90章参照)では書いた。
しかし、日々の記録には限界がある。とりわけ、粛々と仕事に取り組むメンバーほど、印象的なエピソードが記録に残りにくい。そこで係長と共通の職員評価のレンズを持つことの重要性も述べてきたところだ(第88章参照)。
期末に、係長と腰を据えてすり合わせる
そのうえで私が頼りにしているのが、人事考課のタイミングでの、係長とのすり合わせだ。
日々の記録が不完全である以上、評価の精度を補うのは、この期末の対話である。私は考課の季節になると、時間をとって係長から各メンバーの仕事ぶりをヒアリングするようにしている。
その際、あらかじめ係長とは、第89章で述べた業績・結果、業務遂行力、業務姿勢、周囲への影響という4つの視点を共有しておく。これは、第88章で述べた「課長と係長が、共通のレンズで部下を見る」という原則を、人事考課の現場で、具体的に実践する場面にほかならない。この「目を合わせるポイント」が揃っているからこそ、ヒアリングが場当たり的にならず、筋の通ったすり合わせになる。
具体的には「業績目標をどう達成してきたか」を中心に置きつつ、成果→遂行力→姿勢という流れでメンバーの仕事ぶりを一人ずつ確認していく。「〇〇さんがシステムの改良をガンガン提案してくれます」「△△さんが締め切りに遅れ気味のメンバーをフォローしてるんです」といった、現場の係長だからこそ拾える声を聞き取っていく。
係長の目が、課長の死角を埋める
この方法の意味は、係長の目で私の死角を埋めることにある。
前章で触れた、静かに働く優秀なメンバー。課長の私からは記録に残りにくい彼らの貢献も、日々隣で仕事をしている係長なら見ている。私一人の観察では抜け落ちる部分を、係長という「もう一組の目」が補ってくれる。完璧な記録がなくても、現場のリーダーと視点を揃えておけば、最低限のすり合わせはできる。
大切なのは「完璧な記録がなければ正しい評価はできない」と思い詰めないことだ。できることを地道に積み重ね、係長との対話で死角を埋めながら、少しでも評価の精度を上げていく。それが、理想と現実の間で私がたどり着いた現在地である。
読者への問い
あなたの職場では、評価の「理想」と「現実」のギャップを、どのように埋めているだろうか。
次章予告
評価の精度を高める努力は、最終的に「人をどう育てたいか」という問いにつながる。次章からは、管理職にとって避けて通れないテーマ――「人材育成」について考えていく。
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