第十部 全体最適 第111章 課長というポジションで「全体最適」をどう捉えるか

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課長の仕事は、まずは自分のチームをしっかり動かすことにある。与えられた目標、部下の育成、上司への報告。日々こなすべきことは多く、現場で結果を出すことが何よりも優先される。だから一般的には、「全体最適」といった大きな視点は、部長や役員といった上位のポジションが担う領域だと考えられている。

ここで言う全体最適とは、自分の部署だけの成果を追うのではなく、組織全体の方向性や利益に沿った判断を優先することを意味する。課長はあくまで与えられた範囲の中で、目標達成に向けて動く。よく言われるように、部長は目的地を決める役割、課長はそこに至る移動手段や日程を決める役割ということだ。その役割分担自体は間違っていない。

役割分担のあいだにあるギャップ

ただ、ここに一つのギャップがある。部長が決めた目的地への移動手段や日程を決めるにしても、何を実現するためにその目的地に向かうのか、を理解しておかないと適切な移動手段や日程が決められない。

だからこそ、課長にも、少しずつでも「全体最適」に向き合う視点が要る。日々の業務では自部門の数字を追うにしても、その先にある組織全体の目指す方向とどう関係しているのか。そのつながりを考えながら仕事を進めることが、チームにとっても意味を持つ。

もちろん、課長がいきなり会社の理念や社是を声高に語り出しても、現場では「何を言い出したんだ」と思われるかもしれない。だが、だからといって理念を無視していいという話ではない。私は、「理念を語る必要はないが、理念の方向に視線を向けておくことは必要だ」と感じている。

課長が広げるのは「見る範囲」

ただし、課長が広げるのは「見る範囲」であって、「背負う範囲」ではない。全体を背負うのは部長以上の仕事だ。課長が全体を見るのは、全体に責任を持つためではなく、自分の課の判断精度を上げるためである。背負う範囲を区切っているからこそ、見る範囲は広く取れる。

全体最適の最終責任を負うのは部長以上だが、自分たちのチームの努力の方向が組織全体の方針や価値とズレていないかを確認し、部長や役員と擦り合わせるために現場の前面に立つのは課長だ。上からの指示を待つだけではなく、自分たちの動きが本筋と合っているかを問い直すことで、無駄な努力や摩擦を防ぐことができる。課長として自部門の成果を上げたければ、組織全体の方向を意識しなければならないのだ。

次章予告

次章では、そうした全体最適への視野を持とうとするときに現実として立ちはだかる「組織の構造的な壁」について考えてみたい。

読者への問い

あなたが日々の仕事で追っている数字や成果は、組織全体の方向性とどうつながっているだろうか。

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