第十部 全体最適 第117章 第十部を振り返る

全体最適

第十部では「全体最適」を扱った。

このブログでは一貫して、課長の力が及ぶ範囲を正しく見積もること、範囲を区切るから全力を注げることを書いてきた。一見すると全体最適は、その逆を要求するように見える。

だが、書き終えてみると、第十部は、範囲を広げる話ではなく、どこを広げてどこを区切るかの話になったかと思う。

第111章 課長というポジションで「全体最適」をどう捉えるか

課長が広げるのは「見る範囲」であって、「背負う範囲」ではない。全体を背負うのは部長以上の仕事だ。課長が全体を見るのは、全体に責任を持つためではなく、自分の課の判断精度を上げるためである。背負う範囲を区切っているからこそ、見る範囲は広く取れる。

そして、目的地は部長などの上司が決めるにしても、自分も何のためにそこへ向かうのかを理解していなければ、適切な手段も日程も決められない。課長として自部門の成果を上げたければ、組織全体の方向を意識しなければならないという訳だ。

第112章 全体最適がむずかしいのは、組織がそうできていないから

組織は機能ごとに分かれ、それぞれが異なる目標と責任を負っている。この構造は、まじめに自部門の責任を果たそうとするほど、部分最適に傾く。

だから、部署間の連携が難しいのは、相手に悪気があるからではない。組織構造の問題である。それが分かっていれば、調整の入り方が変わる。

具体的に私がやっているのは、部内各課のKPI一覧を毎期眺めておくことと、自分のチームに関する意思決定の直前に「この判断はどの部署に影響するか」と自問することである。

第113章 部長が“社長ばかり見ている”のには、理由がある

部長は、全体最適の現場責任者である。組織が一丸となって動くには軸が要る。だから部長は、自部門の成果よりも、その軸との整合に重心を移していく。背負っている範囲が違うから、見ているものが違うのだ。

中には本当に出世のために社長ばかり見ている部長もいるだろう。だが、見分けようとしなくていい。どちらであっても課長のやることは変わらない。気にしなければ、ストレスにもならない。

第114章 方針は、言葉ではなく事実に表れる

社是や経営計画など会社の全体方針を語る言葉は抽象的で、どうとでも読める場合が多い。だから、事実の動きを注目したい予算がどこに配分されたか。何が目玉事業とされたか。株主総会でどう説明されたか。決算資料に何が書かれたか。人事異動で誰がどこに動いたか。

読み取ったものは、そのまま流すのではなく、部下が働くうえで必要な形に変えて、タイミングよくチームに伝える。原則として自分のチームに必要な情報だけでいいと思っている。

第115章 評価されるのは、目立つ成果か、地味な配慮か

全体最適の仕事は、うまくいくほど何もしていないように見える。摩擦を先回りして潰せば、摩擦は起きなかったのだから、誰も気づかない。

しかも、しわ寄せが部下に行くことがある。そのときに課長ができるのは、「チームメンバーの頑張りを部長にはきちんと伝える」と約束することだ。必ず評価されるとまでは言えないが、伝えることは約束できる。自分がやることだからである。

実は、部長は全体最適の責任を負っている以上、課長が全体最適を意識して業務を進めている姿を見てくれるものだ。もちろん一定のアピールは必要だが。

ただし、部長より上に届くかどうかは自分では決められない。決められないものは気にしない。期待する範囲を、届く範囲に区切る。

第116章 全体最適という、個人の成長

全体最適を意識するようになって、日々の出来事の受け止め方が変わった。「この変更、なんで今?」という戸惑いが、「ああ、あの目玉プロジェクトに繋がっているのか」に変わる。

第109章で書いた式でいえば、知識が増えたぶん、気づく力が上がったということだ。全体最適を考えることは、他人のために我慢することではない。視野の拡大である。

横を見ることと、上を見ること

第112章では、隣の課のKPIを眺めておくことを書いた。第114章では、予算配分や人事異動を見ておくことを書いた。どちらも全体最適のための目配りだが、方向が違う。

横を見るのは、自分の判断が今日どこに影響するかを知るためだ。上を見るのは、会社がどこへ向かっているかを知るためである。前者は摩擦を避けるための情報であり、後者は現場に降ろすための情報である。時間軸も対象も違う。

そして、両方を持っておくと点が線になる。

第十部を貫いていたもの

書き終えて振り返ると、第十部では同じことを三度書いていた。「区切る」ということだ。

第111章では、見る範囲と背負う範囲を区切った。

第114章では、現場に降ろす情報を、チームに必要な分に絞った。

第115章では、評価について期待する範囲を区切った。

区切るから、目の前のことに全力を注げる。

全体最適という言葉は、どうしても「もっと広く」「もっと大きく」と聞こえる。だが、課長にとってのそれは、広げる場所と区切る場所を決めることだった。

このブログの各部のテーマはブログを開始した当初に自分で設定したものなのだが、実は、現場を預かる課長として、全体最適、をどう扱うかは結構悩んだ。今回は、自分の手が届く射程距離と、見ておくべき警戒距離の差として整理してみた。

結果的に当初テーマを設定した時点でイメージしていた内容と、実際に記述した内容はだいぶ違ったものとなっている。それはそれでまた別の視点から記述する機会があれば書いてみたいと思う。


第十部のまとめPDFをAIに作ってもらいました。こちらからダウンロードできますのでご参考までに。

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