第九部第108章、第109章で「なんとなくまずい」という違和感を放置せず追いかけよう、と書きました。これについて、こんな質問をいただきました。
質問
現場は毎日、懸案と言えるほどではない話や、裏の取れていない情報提供など、整理されないままの違和感であふれています。すべてを追跡していたら、課長のほうがパンクしてしまいます。どうやって見分けているのですか。
お答えしたいと思います。
見分けようとしなくていい
実際のところ、私は見分けていません。
というより、見分けは追跡の前ではなく、途中でつくものだと思っています。
第108章で書いた「追跡」は、大掛かりなものではありません。「あれはどうなった?」と一言聞く。それだけです。手間はほとんどかかりません。そして、この一言で大半のものは自然に消えていきます。「もう解決しました」で終わるものが、ほとんどなのです。
第109章でも、部下のセリフを聞き逃さないという話を書きましたがあれでも「それってどういうこと?」と聞けばいいのです。
そこで終わらなかったものが、本物の懸案です。
つまり、選別という作業は要りません。とりあえず問うてみれば、軽いものは自分で脱落していきます。パンクするとしたら、それは全部を自分で調べようとしているからです。追跡とは調査ではなく、問いをひとつ置くことです。
違和感というのは、意識しなくても感じてしまうものです。感じたその都度、軽く問うてみる。それが重い話なのか軽い話なのかは、問うた瞬間にだいたい分かります。
以前、日常の違和感を言語化することについて書きました(第80章)。あちらは自分の学びに変える話でしたが、入口は同じです。感じたら、そこに問いをひとつ置く。向かう先が自分の内側か、外側の現場かという違いだけです。
複数のルートから入ってくる話
ただ、複数のルートから入ってくる情報については要注意です。
課長をやっていると、課の中だけでなく、課の外からも話が入ってきます。他部署の同期からの雑談、社外の知り合いからのひとこと、相談とまでは言えない段階の打診、裏の取れていない情報。
こうした課の外からの話が、別々の筋で、同じ方向を指しはじめたとき。これは問うまでもなく、警報が鳴ります。
ある日の、二つの報告
たとえば、こんなことがありました。
同期のAさんから、こう言われます。「有力取引先である甲社の社長が、うちの社長と懇談会で〇〇な話をしていたらしい」。世間話のような口ぶりでした。
そのすぐあと、部下のBさんが報告に来ます。「甲社の営業のCさんから、今度相談があると言われました」。こちらも、まだ何の相談かも分からない段階の報告です。
一つひとつを見れば、どちらも「へえ、そう」で済む話です。ですが、この二つが並んだ瞬間に、私は覚悟を決めました。これは、大きな話が落ちてくるぞ、と。
そして実際、結構な案件になりました。
なぜ、これが厄介なのか
理由は二つあると思っています。
ひとつは、話が既に動いているということ。上のほうでは社長同士が話し、下のほうでは相手先の営業が動いている。上下から挟まれる形で情報が入ってくるということは、自分のところに正式に落ちてくる前に、すでに物事が進みはじめているということです。
もうひとつは、観測点が複数あるということ。同じ係の二人が同じ愚痴を言っているのなら、それはその場で話題になっているだけかもしれません。ですが、まったく別の筋から同じ方向の話が見えるなら、それは誰かの感じ方の問題ではありません。事象として、そこにあるということです。
考える前に、問う
こうしたことを意識していても、見落としはあるものです。全部を拾うのは無理ですし、拾ったつもりでも漏れます。
だからこそ、これは重要か否か、と深く考える前に、おやっと思ったら声に出して問うてしまったほうがいい。そこを遠慮しないことを自分に言い聞かせています。
