質問
「全体最適のために動いた結果、自部門の目標が未達になりそうです。それでも全体を優先すべきでしょうか。部下にもどう説明すればいいのか分かりません。」という質問をいただきました。お答えしたいと思います。
課長が一人で飲み込む話ではありません
全体最適のために他部門のフォローや調整に回った結果、自部門の数字や目標が未達になりそう——。
私は、課長が広げるのは「見る範囲」であって、「背負う範囲」ではないと考えています。全体最適のために動くこと自体は正しくても、その結果として自部門の数字が落ち、部下にまでしわ寄せが行くような事態を、課長一人で抱え込む必要はありません。それは課長の裁量や責任の範囲を超えています。
部長は、現場の事情までは持っていません
組織における全体最適の現場責任者は、多くの場合「部長」です。部長は全社の方向(軸)に合わせて全体最適を図る立場にあります。
しかし、全社的な視野を持っている部長であっても、現場の最前線でどれだけの業務負荷がかかり、どの程度数字にインパクトが出ているかという現場の具体的な事情までは持ち合わせていません。だからこそ、現場を一番よく知る課長が、その情報を上げる必要があります。
これは一度は必ずやっておくべきことです。判断に影響する事実を持っていながら黙っているのは、課長の職務怠慢だと思います。そして、聞かれればその都度説明します。
異議ではなく、判断材料の提供です
ここで注意したいのは、上司に持っていくのは「そんな方針には反対です」「現場が持ちません」という感情的な異議や不満ではない、ということです。
提出するのは、あくまで判断材料です。「全体最適を優先してこちらの案件を後回しにすると、自部門の今期KPIは〇〇%低下します。全社を優先するか、自部門の目標を優先するか、どのような配分にしますか」というように、客観的な事実と条件を整理して部長に渡します。
伝えれば、判断が変わることもあります
事実と条件を提示すれば、部長の側で「そんなに影響するなら、今回はやめておこう」と判断が変わることもあります。部長は全体最適の責任者ですから、全体に悪影響が出ると分かれば、判断を見直すのが合理的です。
一方で、会社全体の緊急度や優先順位から「今回は自部門の数字が落ちてでも、全社の案件を優先してほしい」と、判断が変わらないこともあります。どちらを選ぶかを決めるのは部長の役割であり、課長が思い悩む領域ではありません。
変わらなくても、理由は聞いておきます
仮に「今回は未達になっても全体優先でいってくれ」という判断になった場合、その理由は聞いておきます。これが極めて重要です。
なぜなら、全体最適の判断で割を食うのは、現場で手を動かしている部下たちだからです。「上が決めたから」とそのまま降ろしても、部下は納得しません。
理由や背景を聞いておけば、部下にこう説明できます。
「今回うちが後回しになったのは、あの案件が止まると全社の納期に響くからだ、と部長から聞いている。だからこちらの数字は抑えられたが、会社としては大きな損失を防げた。この判断とみんなの働きは、私から部長にきちんと伝えてある」
上と下をつなぐのは、降ろすときだけではありません
中間管理職の仕事は、上からの決定事項を下に「降ろす」だけではありません。現場のリアルな事実や条件を整理して上に「上げる」ことも、重要な役割です。
上と下をつなぐ双方向のパイプとして機能すること。それが、板挟みの中でチームを守り、自部門の努力を意味あるものに変えるための、課長の役割だと思います。
次章予告
これで第十部「全体最適」は終わりとし、次は第十一部「持続可能なチームを作る」に進みたいと思います。
