在宅勤務(テレワーク)の部下の評価はどうすればいいか?
読者からの質問に答えるコーナーです。
私の会社では近年、在宅勤務(テレワーク)を希望するメンバーが増えてきました。すると、著者が主張する「4つの視点」で部下を評価しろと言われても、目に入ってこないものは、評価できません。特に、仕事ぶりや協調性は、そばで見ていなければ分かりません。こういう場合、どうすればよいのでしょうか。
お答えします。
コロナ禍以降、在宅勤務が普及し、なかなか目が届きにくくなっています。正直に申し上げて、これは、私自身も、現場で直面している難問です。
見えないものは、評価できない
まず、ご指摘は、その通りです。
私は、評価には4つの視点があると述べました。根幹となる①業績・結果を、②業務遂行力、③業務姿勢、④周囲への影響、が支える、と(第89章参照)。評価そのものにおいて、最も重要なのは、①業績・結果です。ただ、人材育成という観点では、②③④を伸ばすことが、めぐりめぐって①の成果につながる、という話は今後の人材育成の章でも取り上げる予定です。
ところが、在宅勤務では、この②③④が、見えにくくなります。①の業績・結果、つまり成果物や数字は確認できます。しかし、どんな進め方で、その成果に至ったのか。どんな姿勢で取り組んでいるのか。困っている同僚を、そっと助けたかどうか。こうした「仕事ぶり」や「協調性」は、同じ空間にいなければ、目に入ってきません。見えないものは、メモできませんし、評価もできない。これは、事実です。
それでも、まだ補える範囲か
ただ、ここは、程度の問題でもあります。
幸い、私の職場では、週の大半を在宅で過ごすような社員は、今のところ、ほとんどいません。出社する日も、それなりにあります。ですから、第88章で書いたように係長の目を借りれば、まだ、何とか補える範囲だと考えています。
第8部で繰り返し述べてきたように、課長は、係員のすべてを、直接は見られません。在宅勤務は、この課長の死角を、さらに広げます。だとすれば、「係長の目を借りる」という原則の重要性は、在宅の時代にこそ、むしろ増すのです。
なお、テレワーク比率がさらに多い企業(業種)では、そもそも、業績評価の比重を、高く設計しているのではないでしょうか。在宅の度合いと、何をもって評価するかは、セットで決まる。仕事ぶりや協調性を重視する評価は、ある程度、対面を前提としているのだと思います。
見えないなら、対話で引き出す
それでも、見えにくさが、評価に支障をきたすようであれば、私は、もう一手、打とうと考えています。個別の面談の頻度を、意図的に高めることです。いわゆる1on1を導入している企業であれば、それを活用することもできるでしょう。できれば直接面談が良いと思いますが、WEB面談でも、構いません。
自然に目に入らないのであれば、対話を通じて、引き出せばよい。「最近、どんな進め方で仕事をしている?」「チームの中で、誰かをサポートしたことは?」「何か、困っていることは?」と、②③④に関わることを、こちらから、問いかける。自然に目に入らないものを、対話で、引き出すのです。
ここで大切なのは、以前「自己評価」の章でも述べた通り、「自己採点」ではなく「事実報告」を求めることです。「自分は頑張っています」という自己アピールではなく、具体的に、何を、どう進めたのか。その事実を語ってもらえれば、直接は見えなかった②③④を、評価の材料として、拾い上げることができます。観察できない分を、対話で補う、というわけです。
割り切ってしまいたくはない
もっとも、評価基準自体が、業種や職種によっても変わるものであり、実績と、それ以外の視点と、どちらに、どれだけ重きを置くか、完璧な正解が、きれいに出る問題ではありません。
現実的には、今日の世の中の流れは、実績評価に重点を置く方向なのかもしれませんが、実績偏重に振れれば、いずれ、プロセスや人物も見ようという揺り戻しが来る。現代の実績評価重視の流れも、その揺れの一つの局面にすぎないのかもしれません。
そう感じるので、私は、「在宅勤務だから、実績だけで評価するしかない」と、割り切ってしまいたくはないのです。
係長の目を借り、対話の頻度を高め、できる範囲で、多面的に見ようとする。その地道な努力を、続けていきたいと思っています。
次章予告
評価の精度を高める努力は、最終的に「人をどう育てたいか」という問いにつながる。次章からは、管理職にとって避けて通れないテーマ――「人材育成」について考えていく。
