業績を支える「業務遂行力」をどう育てるか
前章(第95章)で、評価の目は①業績・結果に向け、育成の手は②業務遂行力③業務姿勢④周囲への影響(チームへの貢献)に差し伸べると述べた。まずは「②業務遂行力」である。業務遂行力が高まれば、結果として①の業績・成果は後からついてくる。では、どうやって遂行力を伸ばすのか。それは「背伸びの仕事(負荷)」と「実務の型(フォーム)」の掛け合わせによって実現する。
遂行力を伸ばす前提:「背伸びの仕事」を任せる
遂行力を伸ばすための核心は、まず「何を任せるか」にある。本人が楽にこなせる実力内の仕事ばかりを反復させていても、型は身についても力は伸びない。リーダーは、部下の現有能力より少し上の「ストレッチ目標(背伸びの仕事)」を任せる必要がある(第8章参照)。つまり、少し背伸びしなければ届かない負荷をかけることだ。これが、部下に思考の突破力を生ませる第一歩となる。ただし、ただ重い負荷をかけるだけでは部下は潰れてしまう。そこで必要になるのが、以下の3つの「実務の型(フォーム)」だ。
型その1:「目的」から逆算し「作業」に落とす力
部下の仕事が遅い、あるいは手戻りが多い場合、その原因の多くは「作業に落とし込めていない」ことにある(第35章参照)。リーダーが部下に仕事を任せるときは、単に「これをやって」と丸投げしてはならない。必ず「何のためにやるのか(目的)」を共有し(第36章参照)、部下自身に「誰が・何を・いつまでに」という具体的なタスク(作業)へと分解させるプロセスを踏ませる。「この仕事の目的は何か?」「それを達成するために、まずは何から手をつけるか?」と問いかけ、部下が自らの頭で実務を設計できるようになるまで伴走する。この自走力こそが業務遂行力の土台となる。
型その2:上司を動かす「戦略的報連相」
業務遂行力が高い部下は、例外なく「報告・連絡・相談」の質が高い。リーダーは、自分の部下たちに「上司(自分)を経営資源として使い倒すための報連相の型」を徹底して仕込むべきだ。具体的には以下の3点である。
- 結論から話す:状況説明から入るのではなく、相手が判断しやすいように結論を先に言わせる(第57章参照)。
- 数字で語る:「順調です」「難しいです」といった曖昧な感想を排し、客観的なデータや数字で状況を説明させる(第58章参照)。
- 先回りして報告する:上司から「あれどうなった?」と聞かれる前に動くことで、仕事の主導権を握る(第14章参照)。
これらは単なるビジネスマナーではない。部下が自分自身の仕事の裁量を広げ、スムーズに決裁を通すための「武器」である。
型その3:「失敗」を言語化する力
どれほど優秀な部下でも、予定通りに仕事が進まないことや、失敗することは必ずある(〔コラム〕人生、予定通りなんて、滅多にない)。業務遂行力を高める上で重要なのは、失敗しないことではなく、失敗を教訓として生かすことができるかどうかだ(第78章参照)。
部下が壁にぶつかったとき、ただ「次から気をつけろ」で終わらせない。起きた「事実」と感じた「感情」を区別させ(第23章参照)、何が問題だったのかを言葉にさせることだ。
私のやり方は単純で、「何が起きた?」と「どう感じた?」を、必ず分けて聞く。事実を先に、感情を後に。この順番を固定するだけで、部下の頭の中は整理され始める。失敗を自らの手で言語化して学びに変える習慣がつけば、部下はリーダーが手取り足取り教えなくても、勝手に成長していくようになる。
まとめ:リーダーの役目は「生存戦略」の伝授
私にとって部下の業務遂行力を育てるということは、彼らの人間性を変えようとすることではなく、彼らが無駄に消耗せず確実に成果を出して生き残るための「生存戦略(型)」を手渡すことである。
次章予告
型は手渡せる。だが、手渡した型を使い続けるかどうかは、本人の「姿勢」にかかっている。次章では、③業務姿勢の育て方を語りたい。
読者への問い
あなたは部下に仕事を任せるとき、実力より少し上の「背伸びの負荷」と、それを乗り越えるための「実務の型」をセットで手渡せているだろうか。
