第八部 人事評価と部下育成 第94章 人材育成の羅針盤は何か

人事評価

第93章では、育成は「会社のため」、つまり「おかれた場所で役に立つ人材に育てること」を出発点に置くと述べた。では、会社の戦力に育てるとは、具体的に何を伸ばすことなのか。

育成の方向は、評価の4指標が教えてくれる

人材育成というと、特別な制度や研修が必要だと思われがちだ。しかし現実には、日々の業務を通じたOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)こそが基本だ。問題は、その日々の指導で「何を伸ばせばいいのか」が曖昧になりがちなことだ。

第92章で、評価は最終ジャッジであると同時に、育成の道しるべでもあると述べた。その道しるべの実体こそが、評価の4つの指標である。第89章で述べた①業績・結果、②業務遂行力、③業務姿勢、④周囲への影響(チームへの貢献)。この4つに沿って部下を見て、育てる。そう考えれば、育成で迷うことはなくなる。育てるとは、この4指標における実力の底上げにほかならない。

特に伸ばすのは②③④である

4指標のうち、育成の場面で特に意識したいのは②業務遂行力、③業務姿勢、④周囲への影響だ

評価において最も重視すべきは①業績・結果だと、私は繰り返し述べてきた。だが育成となると話は別だ。①は結果であって、直接手を入れられる場所ではない。「成果を出せ」と言うだけで成果が出るなら、誰も苦労しない。上司が働きかけられるのは、成果を生み出す土台である②③④のほうだ。だからこそ、評価の目は①に、育成の手は②③④に向ける。ここが伸びれば、成果は後からついてくる。

では、②③④はそれぞれどう伸ばすのか。ここには一言では語れない勘所があるので、この後の章で一つずつ書いていきたい。

気づいたら、その場で伝える

伸ばし方の各論に先立って、すべてに共通する大原則を一つだけ述べておく。タイミングだ。

第92章で、期中の指導が最重要だと述べた。その中身がこれである。部下が日々どう動いているかを見て、小さくても工夫や成長があれば認め、懸念があればその場で指導する。

逆に、何も言わずに放置しておきながら、いきなり低い評価をつける。これは本人にとって納得しがたいし、不信感を招く。「特に何も言われなかったのに、なぜこんなに低い評価なんですか」と不満を口にする部下は、実際にいる。

評価の4指標を常に頭に置き、気づいたことをタイムリーに伝える。これが、日常業務の中でできる人材育成の基本である。特別なことは何もいらない。羅針盤さえ持っていれば、育成は日々の仕事の中で回っていく。

次章予告

次章からは、その羅針盤の針が指す先――②業務遂行力、③業務姿勢、④周囲への影響――を、どう伸ばすのかを順に書いていく。まずは②業務遂行力。鍵になるのは「任せ方」だ。

読者への問い

あなたは日常の指導を、何を羅針盤にして行っているだろうか。

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