第七部 リーダーの学び 第81章 経験だけでは足りない──用語と名詞を押さえて学びをアップデートせよ

学習、学び、成長

経験だけでは足りない時代

ここまでの各章でリーダーとしての成長には、挑戦から得る失敗や成功の経験、日々の業務でも気づきの積み重ねが大切だという話をしてきた。私自身、経験に勝る学びはないと感じている。だが、それだけでは十分とはいえない時代になってきている。

技術革新、人材の多様化、世界情勢も目まぐるしく変化している。こうした変化に対応するには、「経験+学習」による自己更新が必要だ。

「日経キーワード」を通読した思い出

管理職になりたての頃、私は「日経キーワード」を自腹で買い、隅から隅まで読んでいた。3年続けたら知っている単語ばかりになったのでそれで止めたが。

会社から言われたわけではない。部門の違う異動を経験し、自分が知らない用語や概念が飛び交う場面に何度も直面したからだ。「知ったかぶりで進めて手戻りするより、地道に押さえておく方がずっと健全だ」と実感していた。

そのおかげで、上司から「GDPの算出の仕方って分かる?」と突然聞かれてもすぐに答えられた。仕事に直結する用語だけではなく、幅広く押さえておいたことが、想定外の場面で効いた瞬間だった。

もっとも、今考えると、日経キーワードはもっと早く、できれば新人時代に読んでおくべきレベルだと思う。AIに聞けばGDPの算出方法は一瞬で分かるだろうが、AIの回答の妥当性を判断するにはどうしても基礎的な知識は必要だ。日経キーワードを通読した経験は当時の私にとっては会話や読み書きするうえで土台となった。

第一歩は「用語の理解」から

「日経キーワード」は一般的な時事・経済用語の話だが、業界や組織には独特の用語や略語が飛び交う。それを誤解したまま進めれば、無駄なやり取りが生じる。正確に理解することで、プロとして効率的なコミュニケーションが可能になる。

新しい概念や制度は毎年のように現れる。自分が経験していない分野でチームを率いることは珍しくない。そんなときこそ、公式資料や法令にさかのぼって定義を確認することから始めよう。用語の意味が腑に落ちれば、自信を持って業務に臨める。

「名詞」を押さえることの重要性

特に押さえるべきは「名詞」である。

新しいチームを率いるとなれば、まず耳に飛び込んでくるのは人名、社名、部署名、地名だ。これらは会話の地図のようなものだ。誰がどの立場で、どんな背景を持ち、業務とどう関わるのか。それが見えてくると、点が線になり、全体像が浮かび上がってくる。

もちろん、チームの業務の全体構造を把握したうえで用語や人名を位置づけるのが理想だ。ただ現場では逆に、飛び交う言葉や名詞から構造を「逆引き」して理解を深める方が早いことも多い。だからこそ、最初のうちは意味が分からなくても、とにかくメモをとり、調べ、必要なら質問することだ。

言葉を拾い、学びに変える力

リーダーとしての学ぶ力とは、経験に甘んじず、自ら言葉と名詞を拾い、整理し、学びに変えていく姿勢である。これこそが現場に順応し、全体を構造的に理解する入り口となる。地味な積み重ねが、リーダーとしての厚みを作っていく。

読者への問い

あなたは最近、新しい職場や業務で飛び交う「言葉」や「名詞」を、自分の学びとして取り込む工夫をしているだろうか。

このブログでは『考え方やフレームワーク』を扱っています。『明日の現場で即使えるケーススタディ』をnoteで公開しています。当ブログでこれまで語ってきた「型」や「かまえ」を実際の現場場面にあてはめた問題集として読んでいただけます。→【noteはこちら】

次章予告

 本章に関連するコラムを挟んで、概説書の通読で業務の土台づくりについて取り上げます。

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